第5章 笑顔の裏に恐怖
彼の本命は私とかヴィランじゃなかった。
彼の本命は、ヒーローを志すことだった。
しかし、私は変えてしまった。彼の人生全てを私は変えてしまったのだ。
『怖いんです……』
トガさんが恋バナを聞きたがるので、素直に話した。意外と真剣に聞いてくれて嬉しかった。
「私は狂った人も醜く美しいと思うんですよ!でも、自分のせいで狂うのは怖いですよね」
『怖い、怖いの……可愛らしい出久が消えて……』
「そう、ですか……」
トガさんは涙を流す私に戸惑いながらも抱き締めてくれた。何人も殺した人間とは思えないくらい優しかった。
『怖い、怖いよ……』
トガさんは私の背中を優しく撫でてくれた。
出久が更に悪人に変わっていく。もうすぐで完全なる悪魔になりそうで怖い。
元は自分がいけないのだ。
友達が欲しいからって一人ぼっちの出久に話し掛けて心を動かすようなことを言った私がいけなかったのだ。
「私はお父様に相談するのもアリだと思います、何か分かるかもしれないです」
目の前で笑うトガさんの顔はとても優しいものだった。