第1章 笑顔が美しい君
『私の立場、君が目指すのと真逆なんだよね』
「えっ?」
僕は彼女の言葉に首を傾げた。彼女はとても暗そうな顔をしていた。
『私の話聞いても引かないでくれる?』
彼女の瞳は震えていた。僕は何か悩み事があるのだと思って頷いてしまった。
『私のお父さん、敵連合の長なんだ。オールマイトと一回戦ったらしいけどね。お父さんが仕切ってる敵連合の人と一緒に住んでるんだ』
本当に真逆な話だった。僕は強い衝撃を打たれ、ただ静かに聞くことしか出来なかった。
『今日はね、こっそり抜け出して来たの。外の世界はどうなっているだろうって。そんな時に君に出会ったんだ』
彼女は僕の顔を見て小さく微笑んだ。
『私ね、お父さんに一度も会ったこと無いの。声しか聞いたことないんだ』
親なのに一度も会っていないとはどういうことなのか。
『ただね、友達が欲しかっただけなんだ。同い年くらいの人とたくさん話してみたかったんだ……』
彼女は涙を流していた。
こんな僕でもたくさん話せるような友人が欲しいと思う時はある。無個性でも仲良くしてくれる友達が。
僕は彼女の背中を撫でていた。彼女は僕の顔を見た。