第13章 文化祭
ヒーローになりたいか、そう聞かれるとなんて答えていいか分からない。
興味もあるにはあるけど別になりたいワケじゃない。
私は出久達と一緒に生きていくんだ。
出久達が射的で楽しんでいるのを少し離れたところで見ていた。
「エマちゃん?」
そこには、鋭くん……切島鋭児郎が居た。
マズイ、逃げなきゃ。そう思って走り出そうとしたら、鋭くんに腕を掴まれた。
「大丈夫。誰にも言わねぇよ」
『でも、信用できない……』
今更文化祭に来たことを後悔している。
私が完全にヴィランとして生きると決めてしまったから、せっかく出来た友達である鋭くんも突き放さないといけない。
――ヒーローになりたい?
先程の金髪おじいちゃんの言葉が脳裏に蘇った。
私が最初からそちら側の世界で生まれていれば、こんなに苦しいことにはなっていなかったかもしれない。
もしあの人が私のことを知ってて言ったのなら、雄英高校は私を受け入れようとしているのだろうか。
「玲奈ちゃん。俺はお前がヴィランであっても関係ない。大切な友達だからな!」
鋭くんの言葉を素直に受け止めて良いか分からない。どうしたらいいの……?
鋭くんが私のことを名前で呼んだということは、やっぱり知っているんだと思う。その上で私に話し掛けて来ている。
学校側の作戦か、それとも個人的な感情からなのか分からない。
『ごめん、鋭くん。これで失礼するね』
私は走って出久のところに戻った。
私、なんでこんなに心を揺さぶられているのだろうか。