第56章 正義 2
誰が襲ってくるわけでもないのに、不気味な街だわ。歩いているうちに、どんどん霧は濃くなってくるし…。今夜は油断できそうにないわね。
「ささ、ジョースター様。あれが私のホテルですじゃ。」
おばあさんは名乗っていないはずの私達の名前を呼んで、にこやかに振り返った。
私は思わず承太郎の方に寄って耳打ちする。
「ねぇ。あの人、今ジョースターって言った?」
「ああ。あのばぁさん、なんか怪しいぜ。」
それにやっぱり、このおばあさんだけやけに饒舌なのも気にかかる…。
宿でも油断しないほうが良さそうね。
「いいか、俺の名を言うんじゃねーぜ。」
「了解。他のみんなにも伝えておくわ。」
おばあさんと呑気に話すポルナレフを尻目に、私達は宿の中へと入った。
宿は古そうではあるが、それなりに整頓されていた。
それぞれ順番に宿帳に名前を書いていく。
「アンナ、ほらよ。」
承太郎にペンを渡され、みんなの名前の下に名前を書く。
念の為、私も本名を書かないほうがいいのかな…。でも偽名なんて使ったことないし。
おばあちゃんの名前である「スージー」と書こうと思い手帳をみると、大きく書かれた「Q」の文字。
…血は争えないわね、承太郎。
私は「Qtaro」の下に「スージー・ジョースター」と書くと、案内された部屋へと向かった。