第56章 正義 2
私がみんなのところに戻ると、承太郎達は男の遺体を調べているところだった。
「ざっと見たところ、我々と同じ旅行者のようじゃな。」
おじいちゃんが極力遺体を触らないように調べながらそう言った。
それにインドの紙幣も持っていたので、おそらく彼はこの町の人間ではないという結論に至った。
彼は、一体何に向かって銃を発砲したんだろう。それに発砲事件が起きたにしては、街の人達があまりに無関心すぎないかしら…。
そう考えていると、遺体を調べていたおじいちゃんとポルナレフが叫びを上げた。
「傷だ!喉の下に10円玉くらいの傷穴があるぞ!これか、死因は!?」
承太郎がさらに男の服を脱がせると、男の体全体に無数の穴があいていた。
あまりに奇妙な光景に思わず固まってしまい、目が離せない。
「穴がボコボコに開けられてるぞ!トムとジェリーの漫画に出てくるチーズのように!」
やめてよ、ポルナレフ。チーズを見るたびに思い出しちゃうじゃない…。
「アンナさん。」
「!?」
不意に肩を叩かれて、思わずビクッとする。
後ろを振り返ると、花京院が心配そうにこちらを見ていた。
「顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」
「ありがとう。ちょっとびっくりしちゃって。」
改めて死体を見ると、穴があちこちあいているのに血は一滴も出ていなかった。
ということは、やっぱりスタンド使いの仕業の可能性が高いわね。
街を出るか、残るか。思案をめぐらしていると、不意に後ろから声をかけられた。
「旅のお方のようじゃな。この霧ですじゃあ、もうこの街を出るのは危険ですじゃよって。」
背の低い杖をついたおばあさんは、にこやかな顔でそういった。
どうやらこの近くで民宿をしているらしい。
「おお~!やっと普通の人間に会えたぜ!」
ポルナレフはそう言って喜んでいたけど、これだけ他人に無関心な街で親切な人がいると逆に怪しく見えるわ…。
けれど、他に行くあてもないのでそのおばあさんの宿へと向かうことにした。