第53章 運命の車輪 5
「よろしくね、ポルナレフ。」
「はぁ!?」
彼はありえない、と言った顔でこっちを見ている。
嫌よ、花京院の膝に座ったら心臓が爆発しちゃうじゃない。
「仕方ないでしょう?誰かに座らせてもらわなきゃいけないんだから。」
「さっきおめーを担いだせいで疲れてるんだよ、花京院の方に座れ。」
ポルナレフが親指でクイッと花京院の方を指した。
真ん中に座っているアンちゃんも呆れたようにため息を付いている。
「ポルナレフお願い!強いし、ガタイもいいんだから!」
「嫌だね!」
「仲良しさん、とっとと座ってくれんかのう。」
どこまで言っても平行線の私達におじいちゃんが苦笑する。
さすがにこれ以上みんなを待たせるわけにも行かないので、花京院の方をチラリと見る。
花京院はニコっと笑うと、ハイエロファントの触脚が私の体を包み、そのまま花京院の膝へと引っ張られた。
「か、花京院!?」
彼は自分の膝に私をそっとおくと、普段より少し拗ねた口調で言った。
「アンナさん。ポルナレフより細身ですが、僕だって男です。あなた一人支えるくらい、何てことないですよ。」
声のするままに振り向くと、花京院の顔が至近距離に顔があり慌てて顔をそらす。
でも前を向いたところで、他の五感はしっかりと働いている。
同じように旅してるとは思えない石鹸のような優しい香りに、車のソファーとは違う温かな感触。
そして、そっけない態度とは裏腹にバクバクとうるさい私の心臓。
嫌でも花京院の上に座っているのだと自覚させられる。
ちらりと横を見れば、アンちゃんが花京院に見えないように小さくピースしていた。
「ジョースターさん、どうぞ出発してください。」
「うむ。」
私が反論を挟む間もなく、車は出発した。