第53章 運命の車輪 5
「この車、もともと足りない部品が多かったようね。ソードマゼンダで治してみたけど、屋根もフロントガラスもないわよ。」
崖の下まで私達の車を取りに行くのは大変なので、男がスタンドとして使っていた車を移動手段として頂戴することにした。
とは言え、もともとボロ車だったせいで、治したところであまり意味がなかったみたいだ。
私のスタンドの力は傷ついたパーツは治せても、最初からないパーツはどうしようもない。
でなければ、おじいちゃんの義手もとっくに本物の手にしている。
「贅沢を言っても始まらん。」
「そうだぜ。移動手段があっただけでもありがたいもんさ」
声のした方を振り返ると、“処理”を終えたおじいちゃんとポルナレフがこちらに戻ってきていた。
かわいそうに。私達を襲ったスタンド使いの男は大きな岩にピッタリと鎖でくくりつけられていた。
おまけに、「修行僧だから助けるな」という忠告看板付きで。
「それもそうね。じゃあ、そろそろ出発しましょう。」
車は5人乗りで、私はまたおじいちゃんの膝の上か。
フロントガラスもないから、できれば後部座席がいいな。
のん気にそう思っていると、おじいちゃんの口からとんでもないことが発せられた。
「ポルナレフ、わしが運転を代わろう。承太郎、地図を頼む。」
「あいよ。」
そう言うとおじいちゃんと承太郎はスタスタと前の座席に座ってしまった。
残りのメンバーは順に後部座席に座っていく。
え。ちょっと待って。
おじいちゃんと承太郎が前の座席に行ったということは…。
「アンナ、早く乗れよ。」
「乗れって言われても…。」
後部座席に座るのであればだとポルナレフか、花京院の膝に座るしかない。
私は二人の顔を交互に見たあと、ポルナレフがいる方のドアを開けた。