第51章 運命の車輪 3
私達は、あの赤い車を追って再び山道を走っていた。
「おかしいな。地図によるとこの辺は鉄道と並行して走るはずなんだが。」
「どうでもいいぜ。すぐ捕まえるからよ。」
花京院は地図を片手に首を傾げている。
確かに、とても国境へ向かう大きな道とは言い難い。むしろ僻地へ向かうような、険しい山道が続いていた。
私達は四輪駆動車で追いかけているというのに、あのボロい車に追いつけないのが不思議で仕方なかった。
「前の車、アンナオンボロに見えるのに、どうしてアンナにスイスイ走れるのかしら。」
「関係ねぇよ。あそこのカーブで絶対捉えてやるぜ。」
カーブに差し掛かると、ポルナレフはアクセルを踏んで思い切り加速する。
が、次の瞬間。私達の視界に映ったのは、赤い車ではなく崖だった。
「ば、バカな!?行き止まりだ!」
ポルナレフが急ブレーキを踏み、車はすんでのところで崖から落ちずにすんだ。
私達が曲がる直前にカーブしたはずの赤い車は、どこにも見当たらない。
あたりを見渡すも、道は行き止まりになっていて、崖の向こうに行く道は細い吊橋しかない。到底、車が通れるような頑丈さはない。
「あの車はどこに行ったの!?」
「車じゃあ、吊橋は渡れないし。」
周囲を確認していると、後ろから強い衝撃が走る。さっきまでいなかったはずの赤い車が、後ろから私達を崖から突き落とそうと押してきていたのだった。
「「なにぃー!!」」
急いで車をバックさせるが、赤い車が私達の車を戦車並のパワーでジリジリと崖へ追いやる。
「このままじゃ、崖から落ちてしまうわ。」
「もうダメだ!みんな!車を捨てて脱出しよう!」
そいういうと、ポルナレフはブレーキから足を外して降りる準備に取り掛かりはじめた。
…今、ブレーキを踏まなきゃまずくない?
「ポルナレフ、ブレーキが…。」
「ドライバーが先に運転席を離れるか、普通は!誰が踏ん張るんだ!!」
「え…?」
花京院が声を荒げたことで、ポルナレフはようやくことの重大さを理解したが、もう遅い。
私達の車は為すすべもなく、崖の下へと墜落した。
「ご、ごめ~ん!」