第51章 運命の車輪 3
「俺たちひょっとして、おちょくられたのか?」
「どうやらそのようね。」
結局、誰もドライバーの顔を見てないわけだし。完全にはめられたわ。
「奴は一体どういうつもりだ。頭のおかしいドライバーのようでもあり、追手のスタンド使いのようでもある。」
「追っかけてとっ捕まえて、はっきりさせんことにはイラついてしょうがねーぜ!」
ポルナレフは苛立った様子で私達が乗っている車の方へ走っていった。私達もポルナレフを追って車へ向かう。
「あ、そうだ。」
「おい、アンナ。どこへ行く?」
「おじいちゃんたちは先に車に行ってて!」
私はおじいちゃんの制止を振り切り、1人で店の方へ戻った。
承太郎たちが殴っていたお客のこと、すっかり忘れるところだったわ。
私は、いまだに状況が読めずぽかんとしている彼らのもとに駆け寄る。
「さっきは、手荒なマネしてごめんなさいね。」
そう言うと、手早くソードマゼンダで治療した。
店の客たちは、傷が治っていく様子を不思議そうに眺めている。でも、傷が思ったより浅いことは不幸中の幸いね。なんだかんだ、みんな手加減してくれていたのかしら。
治療が終わったとき、ハーミットパープルがニュッと伸びてきて、私に巻き付いた。
ハーミットパープルは、ハイエロファントと違って棘があるので巻き付かれると少し痛い。
「うわっ!」
そんな思い出に浸っている間もなく、私の体は車の方へと勢いよく引っ張られた。そのまま、おじいちゃんの膝の上にストンと着地する。
「アンナ、お前さんというやつは。こんなときにサトウキビジュースを飲んでる暇はないぞ。早く車に乗らんか。」
「こんなときに食い意地なんかはらないわよ!さっき、おじいちゃんたちが殴った人の治療をしていたの!」
ムッとしながらそう言うと、おじいちゃんはすぐにバツが悪そうな顔をした。
「まったく。」
少しため息を付きながら前を向くと、後部座席の方を向いている花京院と目があった。さっきの人たちのことを気にしていたのだろう。私は花京院を安心させるようにウィンクしながら、右手の親指を立てた。
花京院は少し目を見開くと、意図を理解してくれたようで、すぐにほほえみ返してくれた。
「そいじゃ、とっとと出発するぜ!」
私たちは、さっきの車を大急ぎで追いかけた。