第51章 運命の車輪 3
「もう!バカナレフ!!!」
私はソードマゼンダを呼び出し、風圧で落ちる速度を軽減させる。
「おお~。ソードマゼンダの風で!」
「ぐっ…。おじいちゃん、感心している場合じゃないわ。この重量だと、ソードマゼンダでは崖の上までは運べないわよ。」
ただでさえ重厚な作りの四輪駆動車に、6人も乗っているのだ。ソードマゼンダのパワーでは、せいぜい落ちるのを緩やかにするのが限界だ。到底、崖の上までは持ち上げられない。
息を止めて踏ん張る私の腕に、そっとハイエロファントの触脚が触れた。
花京院の場合、『手』は口ほどにモノを言うとでも言えば良いのかしら。そっと触れるハイエロファントは、もう大丈夫と言っているようだった。
「ハイエロファント…。」
「アンナさん、ありがとうございます。あとは僕とハイエロファントグリーンに任せてください。」
私の腕をすり抜けて、ハイエロファントは一目散に崖の上を目指して登っていく。
「やめろ。ハイエロファントは、ソードマゼンダ同様この重量を支えきるパワーはない。体がちぎれ飛ぶぞ。」
「ジョースターさん。お言葉ですが、僕は自分を知っている。バカではありません。」
ハイエロファントの方を見ると、その手には車のワイヤーが握られていた。ハイエロファントはこれ以上車が落下しないよう、持っていたワイヤーを赤い車に引っ掛けた。
なるほど、すべて計算づくってわけね。
「なんとか落下せずにすんだわね。」
「やるな、花京院。ところで、お前相撲は好きか?」
彼の頭の回転の速さに感心したのは、私だけではなかったらしい。承太郎も満足そうな顔で、花京院の方を見ていた。
そして、承太郎はスタープラチナを出すとワイヤーを掴んで車を崖の上まで引っ張り上げた。
「特に土俵際の駆け引きは、手に汗握るよなぁ!!」
スタープラチナは、車が崖の上まで来ると、赤い車にパンチをお見舞いし崖の下に突き落とした。
華麗な車捌きに見惚れてソードマゼンダを出し損ねてしまい、車は大きな音を立てて着地した。
「い、いたた…。」
「ええ、相撲大好きですよ。だけど承太郎、拳で殴るのは反則ですね。」