第51章 運命の車輪 3
「オヤジ、1つ聞く。あの車のドライバーはどいつだ?」
オヤジさんはいつから停まっているのかもわからないと答えた。
もう一度店内を見渡すが、そうなると全員が怪しそうに見えてくる。
「とぼけて名乗り出てきそうもないですね。」
「ふざけやがって!」
ドライバーが誰なのかわからず、みんな少し苛立っている様子だった。
こうなると、喧嘩っ早いおじいちゃんと承太郎は全員をぶん殴って確かめると言い出しかねないわね。
「お姉さん、なんで私の目をふさぐの。」
「なんでもないわ。気にしないで。」
私は、アンちゃんの後ろに立つと彼女の目をそっと覆った。
さすがに殴り合いを見せるのは教育上よろしくないからね、私がガードしないと。
「無関係の者はとばっちりだが、全員ぶちのめす!」
ほら、やっぱり…。
承太郎、おじいちゃん、ポルナレフの三人は容赦なく店にいたお客に殴りかかった。
彼女の目を閉じておいて正解だったわ。
「承太郎!やめろ!ジョースターさんまで!やりすぎです!」
花京院は一瞬驚いたあと、すぐにみんなを止めに入った。
が、みんな攻撃に夢中で聞いちゃあいない。
「花京院、無駄よ。」
「アンナさん…。」
花京院から一緒に止めてくれと言わんばかりの視線を送られたが、私は静かに首を横に振った。
「関係のない人は、あとで私が治療するわ。ほんと、しょうがないんだから。」
私も武力行使は好きじゃないけれど、こうなってしまうと手がつけられないもの。
アブドゥルがいてくれないと、こういうときストッパーがいないのね…。
早く帰ってきてほしい、切実に。
そんな事を考えていると、背後で「バダンッ!」と車の扉が閉じる音がした。そして、すぐに大きなエンジン音が響く。振り返ると、さっきの赤い車からあの太い腕がちらりと見えていた。
わざと車から降りて、私達をからかったのね…。
呆然と車を眺める私達を尻目に、赤い車はそのまま山道の方へ走っていった。