第49章 運命の車輪 1
しばらくすると、車がスピードを落とし始めた。
前を見ると先にいる赤い車が、ゆっくりと走っている。
使い古されているのか、手入れされていないのか、車の窓はホコリまみれだ。
急かすように赤い車のすぐ後ろを走っているというのに、向こうはまったくスピードを上げる気配がない。
「ちんたら走ってんじゃあねぇぜ。邪魔だぁ。追い抜くぜ。」
ポルナレフはイラついた様子でアクセルを踏み、赤い車を追い越した。
加速しながら追い抜いたせいで、跳ね飛ばされた小石がいくつか赤い車に当たる。
「ポルナレフ、荒っぽいぞ。」
「今、小石跳ね飛ばしてぶつけたでしょ!ポルナレフ。」
ポルナレフは私達の話なんか聞いちゃあいない様子で、さらにスピードを上げていった。
見かねたおじいちゃんが、国境を超えるまで事故やトラブルは困るとポルナレフをたしなめた。
まあ、ベナレスで追われる身となったのはそのおじいちゃんのせいなんだけど。
キキーッ!!!!
「うわぁッ!」
車が急ブレーキを踏んだせいで、勢いよく前のめりの体勢になる。
遮るものがなく前方の窓に向かって飛んでいきそうなところを、承太郎が腕で抑えてくれた。
「気をつけな。」
「あ、ありがとう。」
隣を見ると、おじいちゃんは助手席に思い切り頭をぶつけていた。
これは、承太郎が引き止めてくれなかったら窓ガラス割ってたわね…。助かったわ。
ポルナレフの無茶な運転に、流石におじいちゃんも少し声を荒げる。
「言ったじゃろう!事故やトラブルは困るって!」
「ち、違うぜ。見ろよ!あそこに立ってやがる!」
ポルナレフの指差す先には、懐かしいシルエット。
一緒にシンガポールに向かったあの女の子(アンちゃん)だ。
「やれやれだぜ。」
アンちゃんは、鼻歌交じりに帽子を取ると嬉しそうにピースした。
「よっ!また会っちゃったね。乗っけてってくれる?」
また旅が賑やかになりそうね…。
私達は揃ってため息を付いた。