第47章 女帝と水の聖杯 6
「アンナさん。」
「なあに、花京院?」
アンナさんはハイエロファントに向けていた視線を僕の方へ向ける。
これから話そうとしている内容なんて全く知らない彼女は、朗らかに笑っていた。
僕は深く息を吐き、心を落ち着けた。
「さっきの戦いで、僕は追手のスタンド使いから君の生い立ちを聞いてしまったんだ。」
アンナさんはハイエロファントに触れるのをやめ、僕の方に顔を向けた。
「でも、そういう大切な話は、他の人ではなく君の口から聞いた話を信じたい。もし、嫌でなければ…家族のことを聞かせてくれませんか?」
「いいわよ。」
迷いなく応えるアンナさんに、僕のほうが動揺してしまう。
「聞きたかったんじゃないの?」と呆れ笑いしながら、アンナさんは子供の頃の話を聞かせてくれた。
「そんな事があったんですね。昼間は無神経なことを言ってしまって、すみません。」
「良いのよ。幸い、私にはおじいちゃんとおばあちゃんがいてくれたからね。二人には感謝してもしきれないわ。」
ジョースターさんとアンナさんが、特別仲が良いのはそのためだったのか。
「大切な人がまた、目の前から消えてしまうんじゃないかって、時々怖くなることがあるの。花京院がシンガポールのホテルに迎えに来てくれたときもそうだった。でも、今はもう大丈夫だって思えるの。皮肉にも、あのスタンド使いのおかげで踏ん切りがついたみたい。」
そう言って笑うアンナさんは、どこか吹っ切れた様子だった。