第46章 女帝と水の聖杯 5
気分を落ち着けるために深呼吸をすると、私は未だに困惑気味の花京院の方に視線を戻した。
「アンナバカ放っておきましょう。」
私が呆れたようにそう言うと、花京院はようやく我に返った。
「彼ならすぐ戻ってくるだろう。それなら、今のうちにアンナさんの腕を手当しておきましょう。」
「そう言えば、気を失ったときに切ってたわね…。」
「前の傷も完治していないんですから、あんまり無茶をしないでください。」
「善処するわ…。」
私達は、近くで手当ができるような腰を下ろせる場所を探した。
幸い、すぐそこに公園があったので公園内のベンチに座る。
「さ、腕を見せてください。かなり切っていただろう?」
傷自体は深くないものの、腕にはあちこち切り傷ができてしまっていた。
花京院も私の隣に腰を下ろして、消毒液と包帯を準備してくれる。
「もし痛ければ、言ってくださいね。」
そう言って花京院は腕の傷を消毒し始めた。