第44章 女帝と水の聖杯 3
しばらく歩いていくと、小高い丘があった。
丘の麓まで来たとき、私は思わず息を呑んだ。
「父さん、母さん!!」
丘の上に見覚えのある顔が、ずっと会いたかった人たちがいたから。
「会いたかったわ、アンナ。」
「相変わらず泣き虫ね、アンナは。」
「お姉ちゃんも!」
私は溢れる涙も拭わず、丘を一心不乱に駆け上がった。
母さんが、昔のように私をぎゅっと抱きしめる。
「私、ごめんなさい。あのとき…。」
「泣かないで、アンナ。あなたが無事だったのなら、私達は満足よ。」
「お前は優しい子だ。パパもママもよくわかってる。だからこそ、ここまで強くなったんだろう?」
嬉しさがこみ上げてくる。
でも、みんなの顔を見てようやく思い出した。
私が強くなろうと思ったのは、この旅に出たのは、家族へ罪滅ぼしのためじゃあなかったと。
ーみんなを守らなきゃ。
花京院と、承太郎のところに戻らないと。
私が言葉を返そうと思ったとき、手に温かい何かが触れた。
手元に目をやると、よく見知った緑色の細い触脚が私の手に巻き付いていた。
「ハイエロファント…。あなたどこにでも来てくれるのね。ほんと、頼もしい限りだわ。」
優しくハイエロファントの触脚を撫でる。
その後、大きくため息を付いた。
でも、花京院が触れているのは私の右手。
目の前の人達ーつまり私の家族とアヴドゥルがー、私の敵だというサインだったからだ。