第43章 女帝と水の聖杯 2
「見て!器が売っているわ!きれいね。」
アンナさんは一軒の店で足を止めた。
土産用のカップやお皿が並んでいる店だ。
像や花などが描かれた、インドらしい派手な色使いの器たくさん並んでいた。
「飲み食いできれば、何でも同じだろう。」
「はぁ~あ。図太い承太郎君には、この良さがわからないわよね。」
「…やれやれ。欲しいなら、さっさと買ってきな。」
「はーい!ちょっと待っててね。」
アンナさんは店の女性と話しながら、目をキラキラさせてそれらを一つ一つ手にとって見ている。
戦いの最中には見せることのない女の子らしい一面を見た気がして、思わず笑みがこぼれた。
「花京院、おめーもこういうの興味あるのか?」
「それなりに、ね。でもあそこまで可愛らしいのは、さすがに趣味ではないな。」
それ以上は言葉をかわすわけでもなく、あれこれと器を手にとっているアンナさんを二人で眺めていた。
しかし、自体は急変した。
ガラスのカップを手にとった瞬間、突然アンナさんが倒れ込んだのだ。
ガシャン!と大きな音がして、アンナさんの下敷きになった器が割れる。
「アンナさん!?」
僕と承太郎は急いで彼女のもとへ駆け寄った。
「おい!どうした!?」
承太郎がアンナさんの体を支えるが、全く反応がない。
割れた器でところどころ切り傷ができていたが、その他に大きな外傷は見当たらなかった。
とにかく安静にできる場所に移動させなければと思い、店員の女性に声をかけた。
「すまない、君。割れた器は後で弁償するから、この近くで休めるような場所を教えてくれ。」
店員の女性は焦る様子を見せるわけでもなく、むしろ嬉しそうな表情をしていた。
「お代は結構よ、花京院。かわりに、その子の魂をいただいからね。」
「…貴様、まさか新手の!?」
「御名答。あなた達のお命、ちょうだいするわ。」