第43章 女帝と水の聖杯 2
ベナレスの街に到着すると、虫刺されが悪化したジョースターさんは病院へと向かった。
ポルナレフはバスに同乗していた女性といつのまにか出掛けてしまっていた。
僕と承太郎、アンナさんはバザールへ買い出しに来ていた。
バザールは香辛料や、食料、衣類などの店が立ち並び、多くの人で賑わっていた。
人混みの中をさすがに3人で並んで歩くわけにはいかないので、僕は承太郎とアンナさんの一歩後ろを歩く。
「ほんと、どこも人が多いわね。まだ少し人酔いしそうだわ。」
「俺は結構気に入ってるぜ。」
「あんたは逞しすぎるのよ。いや、逞しい通り越して図太いだわ。」
「…オメーの食い意地のほうが図太いぜ?」
「そんな事ないわ!」
「両手のそれは何だ?」
「こ、これは、おやつよ!おやつ!」
「…じゃあ俺もおやつタイムにするぜ。」
そう言うと、承太郎はアンナさんが右手に持っていたサモサをパクっと食べた。
アンナさんが再び承太郎につっかかったが、当の本人はお構いなしにサモサを味わっている。
僕はその光景を、微笑ましく見ていた。
本人たちは否定するだろうが、アンナさんと承太郎は仲が良い。
二人を見ていると、本当の姉弟にみえるほどだ。
彼女も生まれ持ってのスタンド使いだと聞いていたが、きっと承太郎とはスタンドが見えないときから真にわかり合える関係だったのだろう。
この旅に出るまで心のどこかで孤独を感じていた僕にとっては、彼女の真っ直ぐさが少し羨ましい。
「おい、花京院。」
「何ボーッとしてるのよ、置いていくわよ。」
考え事に夢中になりすぎて、距離ができていたことに気が付かなかった。
顔を上げると、少し離れたところに承太郎とアンナさんが、同じように首を傾げて僕を見ていた。
「…仲が良いなぁ。」
「「良くないわ(ぜ)!!」」
「承太郎!真似しないでよ!」
承太郎は返事をする代わりにアンナさんの髪の毛をクシャクシャにした。
二人のやりとりがまるで子供のようで、さらに笑いがこみ上げる。
「何笑ってるの?」
「大した事じゃないさ。さ、アンナさんのおやつタイムのためにも早く買い物を済ませよう。」
「花京院、さっきの聞いていたのね!」
「さぁね。」
僕たちは必要な食料などを買いながら、半分観光気分で雑貨や特産品などを見学していった。