第38章 幕間 1
「ねえ、おじいちゃん。」
「ん?」
「背中の傷、確かに痛いんだけど、痛いのって生きてるからこそなんだよね。」
「…そうじゃな。」
私の心情を察してか、おじいちゃんは文句を言うのをやめて私の方を見た。
「あのとき、すぐ気を失ったからあまり見えてなかったんだけどね。アヴドゥルが撃たれたとき、本当に一瞬だったからそんなに痛い思いはしなかったと、思う。」
黙って聞いているおじいちゃんの心情はわからない。
けれど、真剣な眼差しを返してくれた。
アヴドゥルも覚悟して旅に同行してくれたのは知ってる。
だから、私があの時早く到着していればなんて後悔してる時間も余裕も無い旅だってこともわかってる。
「でも、ありがとうくらい言いたかったな…。」
ごめんね、暗い話なんかして。治療してくれてありがとう!と気恥ずかしくなってまくしたてる。
涙が出ないよう、精一杯の笑顔を向けると、おじいちゃんは私を優しく抱きしめた。
「お前さんは頭の良い子だ。怒りや後悔に囚われず、しっかり前を向いておる。
だからこそ、お前さんが心配になる。アンナ、前を向くのはもちろん大事じゃ。でも、だからといって悲しみを我慢する必要はないんじゃよ。」
おじいちゃんは私の頭をそっと撫でると、部屋の出口のへと向かった。
「今は、他のみんなも入ってはこない。バスが出発するまでしばらくあるから、少し休んでから出てきなさい。」
おじいちゃんが出ていった後、私はこらえていた涙がわっと溢れ出した。
ひとしきり泣いたけれど、この涙はいつまでも止まりそうになかった。
(…お前さんは本当に甘えるのが下手じゃのう。)
アンナの泣き声が聞きながら、ジョセフは帽子を深くかぶり直した。