第38章 幕間 1
あの後承太郎たちと合流したものの、もうひとりの敵ホル・ホースには逃げられてしまった。
先を急ぐ旅で逃げる敵をいちいち深追いしてはいられない。
私達は次の目的地であるベナレスに向かうためのバスを待っていた。
バスの待ち時間が予想以上に長かったため、その間には私は背中の傷の手当をしてもらう。
上着を脱ぐ手当をさすがに公共の場で行うわけにはいかないので、私達は一度、昨日いたホテルへと引き返した。
「痛い痛い!!おじいちゃん!もっと優しくしてよ!」
おじいちゃんは、傷口に容赦なく消毒液をかけてくる。
そして私の文句を聞いて火がついたように、おじいちゃんは怒鳴り声を上げた。
「そもそもこんな怪我するからじゃろう!お前さんは戦わなくていいと何度言ったらわかるんじゃ!これじゃ波紋でもしばらく治らんぞ。毎度毎度むちゃしおって!誰に似てこうなったんじゃ!」
「そんなの、おじいちゃんに決まってるでしょ!」
あの穏やかなおばあちゃんに似たらこうなるわけないじゃない。
運動神経がおじいちゃんに似なかったせいで、怪我をしてしまったとも言えなくないけれど。
おじいちゃんはどうしても納得いかないのか、「だからお前さんを連れてくるのは反対だったんじゃ」と文句を言い続けていた。
こうして二人で言い争っていると、なんだかアメリカの家にいた頃を思い出す。
たった数週間前のことなのに、すごく懐かしい。
その頃にはまだアヴドゥルもいたのに…。
故郷を思い出した気が緩んだせいか、彼がいないのだという実感と寂しさが私をおそった。