第36章 皇帝と吊られた男 4
いつの間にか、私達3人を取り囲むように人だかりができている。
そしてお金をせがむ集落の人達の瞳を、ハングドマンが移動し始めた。
ハングドマンはあちこち移動を繰り返しながら、ナイフで私達を切りつけてくる。
でも周囲の人が多くて、どこから攻撃が来るのかもわからない。
「何とかみんなの視線を集めないと…。」
私は周囲を見渡していると、フワッと左手に覚えのある温かい感触が。
手の方を見ると、やっぱりハイエロファントグリーンの触脚だった。
左手に触脚が触れるのは『花京院がいる』のサイン…。
火の棒と大地の金貨(第28章参照)の戦いで、花京院がくれた合図と同じ。
ハイエロファントグリーンは、その触脚で私の手を優しく包んだ。
バッと視線を上げると、花京院と目が合う。
「任せていいのね?」
私の問いかけに、花京院は小さくうなずいた。
「そういえば泣き喚くのがうまかったなぁ、おめーの妹はよお。そっちの娘はどんな泣き声を聞かせてくれるのかねぇ。死なない程度にかわいがってやるからな!ケヒヒヒヒ。」
「や、野郎…!」
J・ガイルの挑発に、ブチギレそうになるポルナレフ
そんなポルナレフを落ち着かせるような口調で、花京院が話はじめた。
「ポルナレフ、そのセリフは違うぞ。あだを討つ時というのはやろうなんてセリフを吐くもんじゃあない。こう言うんだ。」
「我が名は花京院典明。我が友人アヴドゥルの無念のために、左にいる友人ポルナレフの妹の魂の安らぎのために。死をもってつぐなわせてやる。」
そう言うと、花京院はポケットから金貨を取り出した。
「拾ったものにはこの金貨をやるぞ!顔が映るほどピカピカの金貨だ!」
花京院が金貨を放り投げると同時に、みんなの視線が上に集まる。
これなら、ハングドマンの軌道がわかる。
花京院は私の方を振り返った。
「さあ、アンナさん。」
「アイアイサー。」
私はソードマゼンダの風で、J・ガイルが映っている男の目に砂を巻き上げた。
「メルシー。花京院、アンナ。」
男が目を閉じた瞬間、ポルナレフはハングドマンを真っ二つに切り裂いた。