第34章 皇帝と吊られた男 2
ザーザー…。
雨の音が聞こえる。
また、あの日の夢だ。交通事故の日の記憶。
何かにかにぶつかる衝撃と共に、血と煙の匂いが鼻をかすめる。
でも目の前で倒れていたのは家族ではなくー
「アヴドゥル!!!」
飛び起きた私はゼェゼェと肩で息をしていた。
窓を見れば、外は少し明るくなり始めている。
そうか、昨日はポルナレフが一人で行ってしまったんだ。
なんで、夢の中ではアブドゥルが血を流して倒れていたんだろう。
「まさか!」
私はベッドから駆け下り、アヴドゥルが寝ている部屋へと向かう。
しかし、ベッドはもぬけの殻だった。
冷や汗が背中を伝う。
「アンナ、どうしたんです?」
私の足音で目が覚めたのか、花京院もこちらへ向かってきていた。
ベッドに誰もいないことに気が付き、花京院が目を見開く。
「アヴドゥルさん!?」
「一人でポルナレフを探しに行ったんだわ。花京院は承太郎とおじいちゃんを起こしてきて。私は先に探しに行くわ。」
そのまま部屋を出ていこうとする私の腕を、花京院が掴んだ。
「アンナさん。」
「ソードマゼンダを使えば移動速度も上がるから捜索には向いてる。大丈夫よ、無茶はしないわ。」
花京院はまだなにか言いたそうにこちらを見ていたが、やがて手を離した。
「わかりました。もし敵に遭遇しても逃げることだけを考えてください。敵の正体がわからない以上、戦うのは危険です。」
「わかったわ。じゃ、行ってくる。」
私は花京院の頭をくしゃりと撫で、そのまま外へと走った。