• テキストサイズ

【ジョジョ】タロット~剣の暗示を持つもの~

第31章 火の棒と大地の金貨 3



「意地っ張りなのは相変わらずのようだな。」

「アヴドゥル…。」

いったいどれくらい眠ったのだろう。
アヴドゥルさんとアンナの話し声が聞こえて目が覚めた。
声をかけようかと思ったが、2人の声があまりに真剣で、僕は起きるのをためらった。
かと言って知らんふりする事もできず、僕は寝たふりをしたまま聞き耳を立てることにした。

「前より素直になってきたと思っていたんだがな。何かあったのか?」

「何かあったわけじゃない。こんな旅だけど、気を許せる仲間ができてほんとに嬉しいと思ってるわ。自分でも驚くくらい素直になれた。」

そう言うと、彼女は突然僕の前髪に触れた。
驚いて反応してしまいそうなのを、ぐっとこらえた。
彼女の手が、割れ物を触れるかのように僕の髪を撫でる。その優しい手つきにと温もりに僕は不思議と心地よさを感じた。
彼女は少しため息をついたあと、僕を撫でる手と裏腹に暗いトーンで話を続ける。

「でもこの度は常に危険と隣り合わせ。私のことを心配したせいで、みんなを危ない目に合わせてしまうかもしれない。それが怖くなったのよ。」

もしかして、昨日のことを気にしているのだろうか。
あのときいつもと様子が違ったのは、僕に心配をかけたことに責任を感じていたからかもしれない。
僕の思考はアヴドゥルさんの声で遮られた。

「それだけ仲間を大切に思えたのなら、迷惑だからと遠慮せず、安心して背中を預けられるようになれればいいんだがな。」 

ギシリと音がして、アヴドゥルさんが椅子から腰を上げたことがわかった。

「心配性はそう簡単には治らないみたい。いつもごめんね、アヴドゥル。」

「気にすることはない。世話焼きなのは占い師の性分だからな。」

アブドゥルさんの足音が遠ざかっていき、残ったのは僕とアンナだけ。
彼女とアヴドゥルさんは一体どんな関係なのだろう。
アンナは時々思いつめたような顔をしていることはあっても、心配して声をかけると"大丈夫"と明るく振る舞っている。だから僕は、彼女がこんな風に人に頼る姿を見たことがなかった。
僕の事ももっと頼ってはもらえないだろうか。
仲間として少しでも彼女の役に立ちたい、とそう思った。
/ 237ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp