第30章 火の棒と大地の金貨 2
私と花京院は少し距離を取り、二手に別れて敵を探り始めた。
「手も足も出なくてお手上げか?勇んでいたわりに、全く攻撃を仕掛けてこないじゃあないか。」
「そう思うならどこからでもかかってきなさい。」
「ふん、言われなくてもそうするぜ。」
グランドがそう答えると、辺りは一面霧に包まれ何も見えなくなった。
こうなってしまっては前も後ろもわからない。
ソードマゼンダで風を起こしてみるが、霧は消えなかった。
「この霧は俺のスタンドだ。このスタンドは直接脳に作用して幻覚をみせる。実体はないから風で流されたりしないのさ。」
「これでは敵も味方もどこにいるかわからないだろう。」
右から左から敵の声が聞こえてくる。
私はその声を無視してとにかく歩き続けた。
「アンナさん!敵を見つけました。こっちです!」
後ろから花京院の声がする。
しかし私はその声に答えることなく、花京院の声がした方に全力で攻撃を仕掛けた。
「うぎゃ!」
ドサッという鈍い音が聞こえ、辺りの霧が晴れていく。
そこに現れたのはさっき見た大男ではなく、背の高いやせ細った男だった。これが、グランドの正体ね。
「な、なぜ俺が偽物とわかった。声も形も完璧に化けていたはず。」
「これよ。」
そう言うと私は自分の両手を見せた。
「それは、まさか!」
「ああ。僕のハイエロファントグリーンの触脚だ。」
そう、私の両手にはハイエロファントグリーンの触脚が巻き付いている。
私の手だけでなく、触脚は屋上全体に張り巡らされていた。
花京院は伸び切っている小太りの男を縄で縛り付けていた。
ファイアの見た目はそのままだったのね。
でも、肩には棒を持った猿が乗っている。
おそらくあの猿がスタンドの正体。さっき攻撃されたとき気配を感じられなかったのは、スタンドがあまりにも小さかったからね。
「たとえ幻覚を見せられても、ハイエロファントグリーンでアンナさんの位置もお前たちの位置も僕はわかっていた。」
「敵が近づいたら右手の触脚を、花京院が近づいたら左手の触脚を強く巻きつけて私に合図してくれてたってわけ。原理がわかれば簡単でしょ?」
「相手が悪かったな。おとなしく観念しろ。」