第29章 火の棒と大地の金貨 1
「ところでよ、アンナ。」
「なに、ポルナレフ。」
「お前のスタンド、確かソードのカードの暗示だったよな?剣と言う意味なら、俺の方がふさわしいんじゃあねえのか?」
「言われてみれば、確かにそうですね。」
「ポルナレフ、お前のチャリオッツはタロットの中でも大アルカナと呼ばれる種類のカードだ。大アルカナは22枚で、私を含めアンナ以外はみんな大アルカナに属している。
一方、アンナは小アルカナのカードだ。小アルカナはソードを含め4種類しかない。ソード、コイン、ワンド、カップだ。」
承太郎と花京院も、そこまで詳しく知らなかったので食い入るように話を聞く。
「ちなみに、私のソードは剣そのものを暗示しているわけではないのよ。」
「剣は金属加工の技術の発達によって生まれた道具であり、人類の知恵の進歩を象徴している。また剣は人を裁く力を持つことから、ソードは知性や正義、加護の意味を持っている。」
さすがアヴドゥル。占い師なだけあって、この手の説明は本当にうまい。ただ解説しているだけでも、深い意味があるように聞こえる。
「それにソードは、四大元素の風を意味するカードでもあるの。」
「なぁるほど。それで風を操れるという訳か。ところで、アンナのスタンドが生まれつきなら、スタンドの名前はいつ付いたんだ?」
「アヴドゥルに出会った3年前よ。それまでは守護天使だと思っていたわ。他の人に見えなくて、宙に浮いているんだもの。」
「天使、ね。」
そう言うとポルナレフはワインを一口飲んだ。自分にも思い当たるところがあるような言い方だった。