第29章 火の棒と大地の金貨 1
「まあ、俺も似たようなものだ。見えない人には、なかなか理解されねぇからな。花京院はスタンドについて知るまで、ハイエロファントをどう思っていたんだ?」
「僕、ですか?」
そうだな、と言いながら花京院は窓の外をちらりと見た。
私たちはお互いに、理解してもらえない苦しみを知っている。
私はそのせいで、スタンドを恨んでいた時期さえある。花京院にとってハイエロファントは良い印象ではなかったのかもしれない、と少し思った。
「ハイエロファントは僕自身だよ。人型のスタンドとは言え、狭いところが好きでいつもベッドの下や物の隙間に隠れていたんだ。それが何だか自分自身のように見えてね。」
“僕にはふざけあえる仲間がいなかった”
あの言葉の意味はそう言うことだったんだ。
だから、今まで花京院は信頼し合える人がいなかったんだ。
花京院にとってスタンドが自分自身だと言うのなら、きっとソードマゼンダやチャリオッツより特別な意味を持っている。
自分自身を理解されず、否定し続けられるなんて、どれほど悲しいことなんだろう。
そう思って花京院の顔を覗くと、私が思っていたよりずっと穏やかな表情をしていた。
そんな花京院を見て、考えるよりも先に言葉が出ていた。
「良い仲間に出会えてよかったね、花京院。」
花京院は驚いた顔をして私を見た、そしてすぐににっこりと笑った。
彼は弱くない。きっと過去に対する同情や慰めなんか求めていない。
その過去を穏やかな顔で話せるほど、花京院にとって今が幸せなんだろう。
なら、それを共に喜ぶだけで良い。そう思った。
「ええ。」
返事こそ短いものだったが、花京院は心底嬉しそうに笑っていた。