第12章 【明智光秀】愛、故の戯れ②【R18】
既に真夜中になってしまった城の中、桜姫は光秀の部屋を訪れた。
「こんな闇夜に男の部屋を訪ねてくるとは不用心にもほどがある」
書状に筆を走らせながら光秀は口を開く。帰れとは言われなかった為、桜姫は机を挟んで彼の前へ座った。
「光秀さん……今日の事……」
「今日は、色々と事がありすぎた。忘れろ、お前はただ信長様の元で呆けていればよい」
光秀は持っていた筆を置き、桜姫の方へと顔を向ける。
頬を赤らめ、いつも以上に艶いて見える桜姫に思わず見惚れてしまった。立ち上がった光秀は彼女の隣に腰を下ろしたかと思うと、おもむろに手を伸ばし桜姫の頬に手を滑らせる。
「光秀さん……私っ……」
光秀は、好きではない女とは口づけをしないと言っていた。信長は逢瀬をしてきたと勘違いしていた。他の武将たちの態度もそれを裏付けてくれている気がした……でも、本人からきちんとした言葉を聞いていないことに不安を覚える。
このまま、彼を好きでいていいのか……傍にいることが許されるのか……。
真剣な眼差しを見せる桜姫にさすがの光秀も参ったと呟いて表情を崩した。
「……桜姫」
優しく名前を呼ばれて心臓が飛び跳ねる。ドキドキと高鳴る音が光秀に聞こえてしまいそうだと思われるくらいにうるさく感じた。
「一度しか言わないから、良く聞け。俺はお前の事が……好きだ」
好きだと告げられて重ねられた唇は、街の宿で交わしたそれとは全く違う香りがして、頭の中が蕩けてしまう感覚になる。自然と差し入れられてきた舌を受け入れ室内には控えめな水音が響いた。
「このままお前を俺のものにしたい」
「……でもっ」
深い口付けを受け入れてしまったものの、どこぞのお姫様との縁談話が頭を過る桜姫。不安げな顔に笑みを浮かべた光秀は桜姫の腰をグイッと引き寄せて、耳元へと唇を這わせる。