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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第11章 【明智光秀】愛、故の戯れ①


一方光秀も、廊下を歩きながら今しがた感じていた彼女の体温を確かめるかのようにその掌を握りしめ自嘲するように笑っていた。
この安土へ彼女が来てからというもの、何かが変わっていることに光秀自身も気づいていた。
女人に惚れさせることはあっても、自分が惚れることはないだろうと思っていたのに、何故だかあの娘の言動が気になって仕方がない。
ついついちょっかいを掛けてはそのコロコロと変わる表情を楽しんでしまっていた。
いつでも捕まえることのできる距離にいる彼女が愛おしいと思い始めたのはいつからだろう……。

自分を見て頬を染める娘に、自分は何を与えることができるだろうか?
好きな女とは不思議なものだなどと考えてしまってから再び自嘲した笑みを浮かべた。

「俺は、何を求めようとしているのだ……」

誰にも聞かれることのない呟きは風に飛ばされる。
自分に与えられる物事は全て信長の天下統一の為に必要なものだけだ。自ら求めるなどくだらないと頭を振った。
秀吉のようにあからさまに言動を突きつけるつもりもないが光秀の志とて秀吉と変わらないものがあるのだ。

俺には汚れ役が似合うだろう……

そう心に言い聞かせたのは今に始まった事ではない。
家臣を連れて城下へと向かう光秀の背は先ほどとは違う色を見せていた。

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