第10章 【明智光秀】待人来る②【R18】
「そんな寂しそうな顔すんなよ」
政宗は、今日も寂しそうなその表情を見て思わず彼女の手首を掴み柱に押し付けるように彼女を追いこんだ。
「俺が、慰めてやろうか?」
政宗の唇が桜姫の手首を掠める。
桜姫がビクッと身体を跳ねさせたと同時に、もう一つの手が政宗の手に伸びてきた。それに反応して政宗がニヤリと笑みを浮かべる。
「遅ぇんだよ」
そう呟いて、政宗は桜姫の手首を離した。彼の背後には無表情のままの光秀が立っており政宗の手首を掴んだまま桜姫の方を見つめている。
「俺のものに手を出すとは、どういった……」
「お前が放り出しておくから、拾ってやろうと思っただけだろ」
光秀の言葉に被せるように政宗が言い、掴まれていた手を払った。だが、それ以上何か言いあうでもなく視線だけをぶつけた2人。政宗は桜姫に「ほどほどにな」と告げてその場を去った。
柱を背に動かない桜姫とそれを見下ろしている光秀。久しぶりに顔を合わせ触れ合えるはずなのに、光秀の表情はいつも以上に見ることができず桜姫は身体を震わせた。
「政宗と何をしていた?」
冷ややかな笑みは決して彼の顔ではない。
何をしていたわけでもないが、そう言葉にする事ができない。
「俺がいない間、他の奴らと何をしていた?」
普段通りに過ごし、変わらない毎日を送っていた。何の変哲もない、光秀のいない毎日は退屈で仕方がなかった……と告げればいいのに口から声が出てこない。