第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
秀吉が桜姫を抱きしめる力を強めた時、部屋の襖がスッと開かれた。
「ちょっと、何してるんですか?」
不機嫌極まりないと言った顔をした家康がそこに立っている。突然の家康の登場に秀吉はやれやれと言った様子で起き上がった。桜姫もそれに続いて、身体の向きを変える。秀吉に抱き付かれていたせいか熱のせいなのか、頬が赤く上気しているその姿に家康は盛大にため息をついた。
「安静にしてやれないなら、秀吉さんには帰ってもらいますよ」
その言葉に桜姫は「えっ?」と驚きの声をあげる。胡坐をかいて座っている秀吉はバツの悪そうな表情で家康を見ながら、色々と弁明をしていた。
どうやら秀吉はここに泊まるつもりだったらしい。桜姫を一人にしたくないからと色々と手配をしてくれていて、彼女が寝静まったら寝支度をするつもりだったのだ。
決して疚しいことをしようとしていたわけではないと言う秀吉に、疑いの目を向けながらも家臣に運ばせてきた布団を部屋に運び入れてくれた家康。
「隣の部屋にいますから、くれぐれも安静にですよ」
何度も秀吉に言い聞かせて家康はその場を後にした。秀吉は桜姫の隣に自分で布団を敷くとそこに横になった。
「ここにいるから安心して寝ろ」
「秀吉さん、ありがとう……元気になったら、いっぱいお礼するね」
「礼なんていらない、お前が元気になればそれでいい」
秀吉は桜姫に手を伸ばし、彼女の頭を撫でてやる。心地よい感覚が桜姫を包んで深い眠りへと誘ってくれた。