第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
家康の御殿であるという事で、なんとなく落ち着かないのか、その後は余り眠る事ができなかった桜姫は秀吉の御殿に移りたいと申し出たが、今日は動かない方が良いと言われて仕方なくここで過ごす事となる。
しばらくして政宗が、桜姫でも食べられる粥を作って運んできてくれたり、倒れた時に助けてくれたと言う三成が見舞いに来てくれたりもした。思う様に身体が動かないので申し訳ない気持ちになりつつも、隣にいる秀吉がフォローしてくれたおかげであまり疲れずに済んだ。
そろそろ秀吉も自分の御殿に戻ってしまうだろうか?
色々と片づけをしている秀吉を見ていると寂しさがこみあげてきて、そっと目を瞑った。
ふと枕元に秀吉が座った気配を感じたが、桜姫は目を閉じたまま布団に潜る。
別れを告げられるのが嫌だというただの我儘だ。
秀吉のいない夜なんて何日だって過ごしていたのに、こんなに寂しい気持ちになるのは初めてだった。
桜姫はそろそろと布団から頭を出して、ゆっくりと秀吉の方へ視線を向ける。
微笑みながらその様子を見つめている秀吉は、桜姫と視線が合うと首をかしげてもう一度笑顔を向けた。
しかし秀吉に背を向けるように寝返りを打った桜姫は小さく丸まって目を瞑る。
「桜姫?」
そんな彼女を秀吉は布団越しに優しく抱きしめた。桜姫の身体がピクリと反応する。
「もっと俺に甘えていいんだぞ」
呟かれた言葉に、桜姫は首を横に振った。大丈夫と呟く声は小さく消えてしまいそうで、放っておけるはずがない。