第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
翌日、目を覚ました桜姫は隣の布団で眠る秀吉に安心した。本当にずっと傍にいてくれたことが嬉しかった。昨日よりも熱は下がったようで少しだけ身体が楽になった気がする。布団から起き上がろうと掛けていた夜着を外すと、隣にいる秀吉も目を覚ました。
「どうした?」
驚いたのか飛び上がるように起き上がった秀吉は桜姫の布団を丁寧に掛け直す。
「目が覚めて、汗かいちゃったから着替えたいと思って……起きちゃダメ?」
熱のせいでだいぶ汗をかいたようだ。夜な夜な秀吉がその汗を拭いたりしてはいたものの着替えたいと言う気持ちはよくわかる。
女中に依頼して、着替えを済ませた桜姫は家康の診察を受けたあと、城へ戻ることとなった。熱も下がってきたので多少なら動いても大丈夫そうだ。馬で移動するほどの距離ではないのだが、秀吉の馬で城に行くと言う約束で許してもらった。城に異動すれば、秀吉も仕事をしながら桜姫と過ごす事ができる。信長にも許しを得てそうしてもらうことにした。
嬉しそうにしている桜姫は、昨日よりも顔色が良く。多少なりとも食欲が出てきていた。
秀吉に抱えられて、少しの時間を馬に揺られて過ごす。少しの逢瀬に胸がドキドキして頬を赤くしてしまう。
城内にある秀吉の部屋には、いつも使用している褥が用意されていて桜姫が寂しがらないようにとの配慮が嬉しかった。
同じ部屋で時間を過ごし、仕事の合間には軽い口付けをくれたり甘やかしてくれたりと、いつも以上に幸せな気持ちになる。
たまには病も悪くないなんて不謹慎な事まで考えてしまったが、皆に怒られてしまいそうなのでそんな気持ちは秘密にしておいた。
城内にいる間は、信長を始め色んな武将たちが会いに来てくれて、なんだか慌ただしくも思ったりする。そのたびに、「桜姫がゆっくりできないだろう」と言ってくれるのもありがたかった。
そんな楽しい日々を送り5日ほどで桜姫の病は回復を見せる。家康からもお墨付きを貰って、いつも通りの生活に戻れそうだった。