第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
「桜姫、悪かった」
一緒にいられたからと言って、彼女がこうならなかったかと言えば、そうではないことぐらいは分かっていた。しかし、何か理由を探してしまう性分な秀吉は自分が不甲斐ないからだとどんどん追い詰めているようだ。
もう一度、桜姫の手の傷を確認するようにそこに指を這わせると、指先が軽く動いて、秀吉の手がそっと掴まれた。
「くすぐったいです」
「桜姫、大丈夫か?」
桜姫に掴まれた手をそっと握り返す。秀吉は目を覚ました桜姫に少しだけ安堵した。
桜姫は、自分に何があったのか、何故こんな所で寝ているのか、ここがどこなのか、分からないと言った様子でキョロキョロとあたりを見回している。
すぐそばに秀吉がいたことで不安はないが、身体が重くて怠いのは間違いがない。
そして、城に向かう途中で倒れたことや、ここが家康の御殿であることを教えられると、なんとなく思い出したと言いながら、迷惑を掛けてしまったことに申し訳なさそうな顔を見せた。
「お前が無事で本当に良かった。家康、呼んでくるから待ってろ」
秀吉は桜姫の頭をポンポンと撫でると立ち上がり家康の所へ向かう。彼の大きな背中を見て熱い呼吸をふぅと吐き出してみた。
程なくして家康と共に戻ってきた秀吉は、ずっと桜姫のそばについていてくれている。そう言えば仕事はどうしたのだろうかと、回らない頭で考えた。
「秀吉さん?」
「どうした?どこか痛いのか?」
桜姫はゆっくりと首を振る。
「お仕事は?」
「あぁ……今日は信長様が休みをくれたんだ」
頬を赤らめて桜姫を見つめたのは、自分が彼女の事でいっぱいになり仕事すらまともにできなかった不甲斐なさも混じっていた。
しかし、こうして彼女の隣にいられることはとてもありがたく信長には感謝の意しかない。