第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
秀吉が家康の御殿に着くと、すぐに女中が桜姫の寝ている部屋へと案内してくれる。部屋の中へ入ると、やや薬の匂いが鼻につくが、そんな事を気にしている暇もなく横たわる桜姫の布団へと走り寄った。
向かい側では、家康が時折彼女の手に触れては容体を確認している。三成の姿はなく、静かな部屋の中で呼吸の音だけがやけに響いて聞こえた。
「家康っ……」
「大丈夫です。命に別条があるわけじゃないんで、貧血と軽い風邪みたいなもんだと思います」
家康の話では、ここの所の気候の変化と桜姫の食事に問題があるのではないかという話であった。確かに、桜姫は食事の好みが偏っている節がある。栄養が足りないのだと……。
「もともと体力もなさそうですしね。栄養のあるもの食べて休めば治りますよ。数日は熱が続くかもしれませんが、ゆっくり休めば大丈夫」
「……ありがとうな家康。お前がいてくれてよかった」
秀吉は頭を下げると、眠っている恋人の髪をそっと撫でた。
「俺は少し席を外すんで、桜姫の様子が変わることがあれば呼んでください」
「あぁ、分かった」
家康の去った部屋で桜姫と二人きりになり、秀吉の視線が不安の色を見せる。しっかり休めば大丈夫とは言われたものの今目の前にいる恋人は目を瞑り、顔色も良いとは言えない。そっと擦ってやった手には小さな傷ができていて、痛々しく、見ているだけで苦しくなった。
ここの所忙しくて、あまり一緒にいられなかったせいだろうか?
桜姫をこんな風にしてしまったのは自分のせいではないかと思ってしまう。一緒に昼餉を食べたのはいつだったか……差し入れのおにぎりを食べたのは一昨日の事だった。
秀吉は、自分の失態と言わんばかりに桜姫のこの状況に肩を落とす。