第7章 【豊臣秀吉】医食同源①
「桜姫様っ」
慌てて駆け寄った三成は桜姫の身体を抱き上げる。頬紅がさされており気づかなかったが、いつもよりも顔色が悪い上に呼吸が浅く見えた。
ここからならば城へ戻るよりも家康の御殿に向かった方が早いと判断した三成は桜姫を抱えて家康の御殿に駆け込む。
「家康様っ、家康様っ!!」
慌てて御殿に上がり込んできた三成の声に眉間にしわを寄せながらも部屋から出てきた家康は彼に抱えられている桜姫を見て顔色を変えた。
「どうした?」
「桜姫様が、急に道で倒れられまして城に運ぶよりも家康様の御殿の方が近かったもので……」
家康は自室に向かいながら、三成から話を聞く。しかし、三成も突然の事で事情が分からないと、家康の後を歩きながら焦りを見せていた。
家康の部屋の褥へと桜姫を寝かせて家康は診察を始める。三成は家康の家臣に天主にいる秀吉への言伝を依頼した。
「家康様、桜姫様の容態は?」
「ちょっとうるさい、黙ってて」
周りでウロウロされては落ち着いて診察ができない。家康は三成に座るように言いつけて診察を続けた。浅い呼吸、熱くなり始めている体温とは逆に蒼白になっている顔色、脈も若干弱いように感じる。
家康はいくつかの薬草を棚から取り出して、薬を煎じ始めたのだった。
その頃、天主では変わらずに信長、秀吉、光秀の3人が執務をこなしていた。
天主への廊下でバタバタと慌ただしい足音が聞こえ、思わず秀吉が腰を上げ咎めようと襖に手を開けた時、外から声がかかる。
「失礼いたします、取り急ぎ、豊臣様にお話が」
襖を開け見下ろしたそこにいるのは家康の家臣であった。その慌てた表情を見て何事かと思い、咎めようとしていたことは忘れ信長の方へ顔を向ける。
構わないと言った様子で視線を送られた秀吉は、家康の家臣に何事かと声を掛けた。
「申し上げます。先ほど城下にて桜姫様がお倒れになったとのこと…、ただいま、石田様と家康様が介抱いたしております。すぐに豊臣様へお伝えするようにと参った次第でございます」