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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第7章 【豊臣秀吉】医食同源①


春の終りというのだろうか、暑さも多少なりと出てきている時期。

「今日も良いお天気ですね」

三成の場にそぐわない声が天主に響く。
女中に淹れてもらった冷茶を仕事をしている信長、秀吉、光秀の所へと運びながら、外を眺めていた彼は、涼やかな顔をしていた。
山積みの書に目を通しながら、信長も外を見てみるが両隣で真剣に机に顔を落としている忠臣達を見て、自分ももう一度書状に視線を戻す。
シンと静まり返っている天主では、書を開く紙の音と筆を走らせる静かな音だけが聞こえていた。
三成は自分の仕事を終えたと微笑み、天主を後にする。

「今日は暑くなりそうですね」

一人で呟いた三成は自分の仕事をしなくてはならないと思い出し、一度書庫へ足を運んでから秀吉の御殿へ向かった。
信長たちは、城下の市の様子や近隣の国の情勢を知らせる簡書などを整理、検討しておりあの量を見るとまだまだ終わる様子もなさそうだ。自分は秀吉の御殿に寄せられている町民たちから集めた声をまとめておけと言いつけられていたのだった。
間もなく御殿にたどり着きそうな所で、向かい側から歩いていくる桜姫の姿が見え、向こうも三成の事が見えたのか笑顔で彼女が駆け寄ってくる。

「桜姫様、ご苦労様です。どちらへ?」
「三成くん、こんにちは。政宗の所へおつかいに行っていた帰りです」

桜姫の笑顔にはいつも癒される。秀吉の思い人であり相思相愛であるが故、三成も毎日のように彼女に会っていた。
秀吉がそばにいられない時もあり、そんな時に一緒にいることもあったりする。今日も秀吉は信長の仕事で忙しいので桜姫はこの後、城の自室で縫物でもするのだろうと思っていた。
軽く挨拶を交わしてすれ違い、数歩歩いた時だった。背後からドサリという音がして振り返るといるはずの場所に桜姫の姿が見えず、音がした場所へ目を向ければ今しがた笑顔を向けていた彼女が倒れいる。
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