第6章 【石田三成】鈴音と共に…②【R18】
「……桜姫様。貴方という人は……」
秀吉を彷彿させる口調に、桜姫は姿勢を正した。怒られる……と身体がそう感じたのだ。
「心配をかけないでくださいと言ったはずでしたが……」
三成は簪をそっと外し机に置いた。うつむいたままの桜姫の頭をそっと撫でて、ふぅと息を吐く。
「貴方の部屋に行ったらもぬけの殻、どこに行ったかもわからないままに探せば、こんな時間に光秀様と2人きりでいるなんて……」
「ごめんなさい」
「何をなさっていたのですか?」
「三成くんの部屋に向かっていたんだけど……」
桜姫の言わんとすることを察した三成は深くため息をついてから彼女の隣に座った。
「桜姫様、反省してください。私を心配させたんですから」
隣に並ぶ三成の顔を見上げて、桜姫は瞳を潤ませる。十分に反省はしているし、いつも反省している。自分が方向音痴である事もなんとかしたいとは思っている。どうにもならないのである。
「……三成くん」
「桜姫様」
三成は優しく彼女の名前を呼ぶと、桜姫の唇を塞いだ。
「今日は優しくできそうにありませんよ」
書机の上には書きかけの書類と簪が置かれ、まだ暖かそうなお茶の湯のみが目に入る。
ドキリと跳ねた心臓の音が聞こえてしまいそうな気がして頬を赤くすると、再び三成の唇が桜姫に重ねられた。
チュッと音を立てていた口づけは徐々に深くなり、甘い蜜を吐き出しそうなほど濃厚な物へと変わっていく。
普段みせない男の顔をした三成は桜姫の腰と後頭部を抱え込むように彼女を抱き、唇を味わっていた。