第6章 【石田三成】鈴音と共に…②【R18】
今日は三成も所用で御殿には戻らないらしいと聞き、桜姫は城内の自室で小袖の作成を始める。
真剣になって縫物をしていた為か気づけば日は落ちていて、行燈の灯りを灯そうとして油の残りが少ないことに気が付いた。
こんな時間に誰かに頼むのも気が引けるが、まだ寝支度もしていないため真っ暗になってしまっては何もできないと思い、部屋を出る。
城内の三成の部屋へ行って油を分けてもらうつもりで廊下を歩いた。薄暗くなっている城内の廊下はやはりどこか不気味で、所々に灯りは灯っているが心もとない。
チリンと鳴る自分の簪の音に驚いて足を止めてしまった桜姫は、ふとここが三成の部屋へ続く廊下ではないことに気が付いた。
踵を返し戻ろうとしたところで、背後にあった襖がスッと開く。
「迷子か……?夜這いか?」
それは昼間見たのと同じ含み笑いで、寝衣に身を包んだ光秀だった。
「光秀さん……」
パッと手首を取られて、思わず身じろぐ桜姫を引き寄せる光秀の瞳が怪しく光る。
寄せられた反動で簪が音を立て、ゴクリと息を呑んだ桜姫を見て光秀は小さなため息をついた。
緩められた手を下ろし振り返ると、そこには三成がおり、鋭い眼光で光秀を睨んでいる。
「三成くん……」
桜姫の声にハッとした三成はいつものように笑顔を浮かべ、彼女を見つめた。
「こんな時間に一人でうろつかせるな」
「すみません、光秀様……ご迷惑をおかけしました」
「かまわんさ」
光秀はサッと自分の部屋へと姿を消してしまう。目の前に佇む三成は何も言わないまま桜姫の手を引き、自分の部屋へと足を進めた。
一言も口をきかないまま三成の部屋に引き入れられ、文机の前に座らされる。