第5章 【石田三成】鈴音と共に…①
「すぐに迷子になるのも困ったものだぞ。本当に事件に巻き込まれたりしたらどうするんだ」
城に帰るや否や秀吉のお小言が始まり、シュンと首を下げる桜姫。
そんな彼女の脚を拭きながら三成も黙ってそれを聞いていた。桜姫が怒られるのはあまり嬉しくないが、秀吉の言う事はもっともであり反論の余地もない。
少しして政宗が温かいお茶と茶菓子を運んでくれてやっと秀吉の小言も終わった。
「政宗、ありがとう」
「いや、お前が俺の部下にしてくれようとしたことは本当にありがたいからな。だがな、皆に心配かけるのは良くない。それはしっかり分かっとけよ。今度、あいつらの所に行きたい時は俺を呼べ」
うんと頷く桜姫に三成はハッとした表情を浮かべる。
「どこかへ行くときは、私を呼んでください」
「……はい」
そんな三成と桜姫の様子に政宗も肩を竦め笑っていた。
「まぁ無事でよかった。三成、後は任せたぞ」
秀吉たちも部屋から去り、三成と桜姫は二人きりになる。桜姫は三成にも怒られるのではないかと不安そうな顔を見せた。
「秀吉様の言っていたことをお守りいただければ、私は怒りませんよ」
心の中を読まれているみたいで恥ずかしい。いつも自分の考えている事の一歩先を読まれてしまう彼には頭が上がらない。
「本当は怒ってる?」
上目づかいで尋ねる桜姫に首を横に振った三成は、もう一度足に怪我がないのか確認した。
「安心しています。貴方が無事で本当に良かった」
しばらくは秀吉の御殿の三成の部屋で過ごすと約束をし、桜姫は眠りに就いた。