第3章 【徳川家康】揃い飾り①
桜姫は、城下へ向かうため踵を返した三成の袖を家康のそれを掴んでいた手と反対の手で捕まえた。
突然の抵抗感に三成も驚いて振り返る。
「桜姫様?」
「秀吉さん、私も三成くんと城下に行ってもいいですか?」
桜姫は家康ではなく、三成の上司である秀吉に可否を求めた。それを見ていた家康はあまりの強行具合に驚きを隠せない。そんなにまでして城下へ行きたい理由は何なのだろうか?
「俺は構わないが……」
なんとなくいつもと違う様子の2人に戸惑いながらも秀吉はそう答える。もちろん三成も特に問題はないのでそれに同意した。
「ねぇ、家康。三成くんとなら行ってきていいでしょ?」
嬉しそうな顔をして腕を引かれ、秀吉や三成のいるこの状況でダメだとは言えなくなってしまった家康は、しぶしぶ桜姫の手を自分の着物から離し三成の方へ顔を向ける。
「寄り道はしないでね。用事が済んだらすぐに帰って来る事。帰ってきたら御殿の部屋でおとなしくしている事。三成はちゃんと桜姫の事、御殿まで届けてよね」
「やった~」
「良かったですね、桜姫様」
「よく分からんが気を付けていってくるんだぞ」
秀吉に頭をポンポンされてほほ笑む桜姫を見て、少しだけ嫉妬した。家康は、桜姫の事を一度三成から引き離すと自分の方へ抱き寄せて額にそっと口づけを送る。
「家康様、きちんとお届けいたしますね」
桜姫の事を大事にしているであろう家康に向かって三成が誓うと抱きしめていた手を離した。
「あたりまえでしょ」
家康はそのまま城へと向かって行き、三成と桜姫は城下へと歩を進める。
間に残された秀吉は苦笑いしながら家康の後を追ったのであった。