第19章 【明智光秀】愛酒と愛し人【R18】
梟の鳴き声で突然に目が覚める。
人の気配もほとんどなくなる深夜……桜姫は、ふと閨の隣の部屋に小さな明かりが付いていることに気付いた。
眠る前に灯りはしっかりと消したことを確認したはず、城内の他人の部屋で明かりをつける不届き者がるのだろうか?
桜姫の部屋から一番近いところに私室のある光秀も今夜は不在だし、秀吉も夜遅くに御殿へ帰っていた事を知っている。
大声をあげれば、誰か気づいてくれるだろうか?
恐怖に駆られながら、桜姫はゆっくりと身体を起こす。それと同時にゆっくりと居間と閨の間にある襖が開かれた。
グッと息を呑んだ桜姫は、その人物の顔を見てホッと胸を撫で下ろす。
「光秀さん……」
「起こしたか?」
「いえ、たまたま目が覚めて……」
言いかけた桜姫を光秀がその胸の中へ引き込んだ。
そして、優しく抱きしめた彼女の額に一つ口づけを落としてから、包帯の巻かれている手を取った。
「お転婆も大概にしろ」
包帯の上から手を撫でられて、背筋がゾクリと震えてしまう。怒っているようには見えないが、その瞳は何か言いたげに闇を纏っていた。
予定よりもずいぶんと早い帰りだったのは、自分の怪我のせいだろうかと桜姫は手首に視線を向ける。
「今日は、ずいぶんと秀吉に小言を喰らったと聞いている。ゆっくり休め」
光秀は桜姫に優しく口づけをし、褥へと向かわせた。
「光秀さんは?」
「なんだ、寂しいのか?」
怪しげな視線を向けられてドキリとするが、桜姫は小さく首をふる。
「俺は、まだ仕事がある。隣の部屋にいるから安心しろ」
「はい」
そう言って桜姫は再び、眠りに就いたのであった。