第19章 【明智光秀】愛酒と愛し人【R18】
翌日、桜姫は光秀の仕事が終わるのを待ってからからの御殿へ共に帰る。
光秀の部屋に入ると、見たこともないような綺麗な壺が台の上に置かれていた。
「わぁ、すごい綺麗ですね。光秀さん」
「お前が御館様の大切な壺を壊したと聞いて急ぎ取り寄せた」
光秀のその話を聞いて、桜姫は自分の失態の尻拭いを彼にさせてしまったと申し訳ない気持ちになる。
俯いた桜姫の頭にポンと優しい掌がのり、そっと撫でられた。顔を上げれば、優しい視線を見せる光秀が立っているのが見える。
「気にするな、御館様も気にはなさっていない様子だったからな」
「すみません」
桜姫が小さく呟けば、手首に分かれた包帯へ視線を落とした光秀。そっと彼女の手を取ると、傷口の辺りに唇を寄せた。
その後早く休むように言われた桜姫は大人しく閨へと向かう。
一方、光秀は今宵もまだ仕事があると言うので、少し寂しく思ったのは嘘ではなかった。
闇夜に紛れて人影が動く。
普段から気配など察知する能力のない桜姫は深い眠りに落ちていた。
それでもふと、温かいぬくもりを唇に感じ、桜姫はそっと目を開く。目の前には寝着に着替えた光秀が唇を弧に描き、ほほ笑んでいる姿があった。
唇に感じる温もりに口づけされていたんだと察する桜姫だが、同時に身体の異変にも気が付いた。
両手首が麻縄で括られており、何かに縛り付けられている。決して強く結ばれているわけではないが、怪我をしているせいもあり、思いきりは動かせなかった。
加えて、桜姫が少しでも手を動かすと、縄の括られている台座がガタッと音を立て、それ以上動いてはいけないと警鐘を鳴らす。
「光秀さん……?」
「あまり動くな、壺が割れるぞ」
耳元で囁かれた低い声に背筋がゾクリと粟立った。
その瞬間、光秀から噛みつくような口づけが落とされて、桜姫は呼吸も上手く吸えないままに彼の手によって溶かされていく。
どうやら桜姫の両手は、大切な壺が乗った台座にくくられているらしい。
壺を割ってはいけないと言われ、思う様に身が捩れず、光秀の思うままにされてしまう自分にどんどん心拍数が上がっていった。