第19章 【明智光秀】愛酒と愛し人【R18】
「お前たちは、何度言ったら分かるんだ」
城内に響く秀吉の声。
桜姫の部屋に正座させられているのは、部屋の主である桜姫と秀吉の腹心である三成だ。
その隣では、桜姫の手首に包帯を巻きながらため息を吐いている家康の姿もある。
「桜姫も女の子なんだから、もう少し大人しくしてないと…光秀さんが帰ってきたら叱られるよ」
家康はそう告げると一足先に部屋を出ていった。
「三成も、桜姫の相手をしてくれるなら、しっかりと見ていてやるんだぞ。一緒にふざけてどうするんだ」
「申し訳ありません。つい楽しくなってしまって……桜姫様にもお怪我をさせてしまうとは、光秀様にも面目が立ちません」
秀吉に怒られながら三成は肩を落とし、怪我をしている桜姫の手首をジッと見つめる。
「三成くんのせいじゃないよ。私が転んだだけだし、大した事ないよ。この怪我」
怪我した手を振ってみせる桜姫は笑顔で三成を励ました。
「怪我が大したことあるとか無いとかの問題じゃない。御館様の大切な壺まで壊したんだぞ」
そして、まだまだ秀吉のお小言は続くのであった。
そんな日に限って桜姫の恋人である光秀は出かけており帰城は明日以降の予定だ。
いつもだったら、ある程度の所で秀吉の小言を止めに入ってくれるのだが、そういう訳にもいかないし、家康はそそくさと出ていってしまった。
怪我をした手より足のしびれの方が辛くなってきた頃、廊下の方から声がかかり桜姫は少しだけ足をずらす。
「秀吉、そのくらいにしてやれ」
声の主は信長であった。床の間に飾ってあった壺が壊れたと報告を受けて覗きに来たらしい。
「あの壺も大したものではない。それよりも桜姫、怪我の具合はどうだ?」
「けがは大丈夫です」
そう答えた桜姫の顔を見て信長はククッと笑いを浮かべた。
「秀吉、お前の小言が長すぎて桜姫の足が限界なようだぞ」
「えっ、はぁ……まぁ、二人とも今後は気を付けろよ」
やっと秀吉の小言から解放された桜姫は、信長と共に去っていた秀吉と三成の姿を見送りほっと一息つくのだった。