第18章 【明智光秀】雨のち晴れ【R18】
土砂降りとなった雨も日が落ちた頃にはしとしとと降る雨に変わっていた。
光秀の帰りは遅いだろうか?もしくは今日は帰って来ないかもしれない。
むしろ何時帰って来るかは予想もつかないと言った方が正しいかもしれない。
そんな事を考えながら桜姫は、寝支度を始めていた。
信長にでさえ何も言わずに安土を出ていってしまう人だ。桜姫に何も言わないで出ていく事だって少なくはない……しかし、一つだけ確かな事は、安土を出ていく際には必ずと言っていいほどに桜姫の部屋の窓辺に花が置かれている。
光秀なりの優しさなのだろう。
今のところその花も見当たらないので桜姫は安心して過ごす事ができていた。
寝着に着替えていれば、雨も止んだ様子で月明かりが障子越しに映りだす。
月でも眺めてみようかと入り口の襖に手をかけると、まるで示し合わせたかのようにスッと襖が開かれた。
「まだ起きていたのか?」
「おかえりなさい、光秀さん」
そう言うと同時に光秀の腕が桜姫の身体を抱き寄せる。
桜姫の髪の香りを存分に吸い込み、小さく笑った光秀は彼女からほんの少し身体を離した。
「光秀さん、酔ってます?」
「俺が酔うと思うのか?」
光秀は、そのまま桜姫の唇に貪り付いて、息も吐けぬまま彼の舌を受け入れた桜姫はその唇から甘い息を溢し始める。
やはり酒の香りがするが、光秀がちょっとやそっとのお酒で酔うはずがなく桜姫は、その香りも楽しんだ。
光秀の腕にすがるように手を掴ませ、懸命に呼吸を整えようともがく彼女の姿は光秀自身を奮い立たせていた。
口づけを交わしながら、光秀の手は桜姫の身体を這いまわり、部屋の入り口であることも忘れ熱を上げる。