第18章 【明智光秀】雨のち晴れ【R18】
「寒くはないか?」
「はい。大丈夫です」
光秀は、風呂敷包みを傘を持つ手に持ち替え、空いた片手で桜姫の腰を抱き寄せた。
「桜姫」
名前を呼ばれて、ふと顔を上げれば傘に身を隠して、温かい口付けが降ってくる。
一気に体温が上がった桜姫に、光秀は悪戯な笑みを浮かべて満足気な息を吐くと再び歩き出したのだった。
光秀と桜姫は恋仲である。
だから口づけをするのももちろん問題はない。
しかし、神出鬼没な光秀であるが故だろうか、そう言う甘い行為も突然行われ、突然消える。
今の口づけだってそうだ……、どうして突然、こんな所で一つだけ……。
桜姫には嬉しかった半面、納得がいかなかった。
素直に迎えにいたと言ってくれればいいのに、御殿に帰ってからたくさん口づけを落としてくれればいいのにと、考えてしまうのだ。
まあ、惚れた弱みだろう、そう言う光秀の事も好きで好きでたまらないのだから仕方がない。
桜姫も再び光秀の腕にしがみ付き歩き出した。
光秀の御殿に変える頃には、すっかり足元はびしょ濡れで、草履も重みを増していた。