第15章 【豊臣秀吉】温泉へ行こう【R18】
のんびりと景色を楽しみたいという桜姫に合わせて、目的の湯治場へ向かって馬を走らせた。
初めて走る道は、もちろん見たことのない綺麗な景色が流れてそれだけで幸せな気持ちになる。秀吉の胸に抱かれながら他愛のない会話をしていれば、いつもよりも長い間、馬に乗っていたというのに、あっという間に目的の宿へとたどり着いていた。
「大丈夫か?」
秀吉に手を引かれ、馬から降ろしてもらうと、久々に自分の足で地を踏んだ気がして、少しだけ眩暈を感じたが、すぐにそれも消え去る。
案内された部屋は城内にある自分の部屋よりも広いように思え、桜姫は窓から見える綺麗な景色に目を輝かせた。
部屋の中を楽しそうに散策する桜姫を見ながら、腰を下ろした秀吉は二人分のお茶を淹れる。
「少し休んだらどうだ?」
秀吉に声を掛けられて、姿の見えなくなった桜姫の返事だけが聞こえた。そんな彼女に笑みを零し、熱いお茶を啜る。
「秀吉さんっ、秀吉さんっ」
奥から駆け寄ってきた桜姫は興奮しながら秀吉の隣に駆け込むと、部屋の奥に一緒に来てと、彼の着物を引っ張った。
先ほどの部屋から見える庭とは別の中庭になっている部分にちょうど2~3人が入れそうな露天風呂が設置されている。部屋に風呂が付いていることに大喜びの桜姫。
秀吉は、今までにないほどに嬉しそうな彼女を見て、ここに連れてきて良かったと心底考えていた。
「後で一緒に、ゆっくり入ろうな」
「うん……………えっ?あのっ……一緒にデスカ?」
部屋付きの露天風呂に飛んで喜んでいた桜姫も秀吉の発言に顔を赤くしてしどろもどろに答える。
温泉に来られたことは嬉しいが、一緒に入ることは想定していなかった。
もちろん秀吉とは、褥を共にすることは普通にあるが、一緒に風呂に入ったことは今までなかったのだ。この時代、公共の風呂は男女混浴が常識であり、よくよく考えてみれば、一緒に入ることが分かりきっていた気もするが、突然に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「嫌か?」
桜姫の頬に手を添えてスッと滑らせると、唇に親指を添えてニコリとほほ笑む。そして、軽く親指に力を込めてから、彼女の顎をクイッと持ち上げるとそのまま桜姫の唇を奪った。
軽く重ねられただけの口づけに、身体が熱くなる。
「……いいえ」