第14章 【徳川家康】良薬口に苦し②【R18】
抱えている桜姫の喉に視線がいき、思わず身体を熱くしてしまった家康。忙しさと桜姫の体調不良もあり、しばらく夜伽を自嘲していたのが裏目に出た気がした。今さら、彼女から身体を離すわけにもいかず、落ち着かせるように息をつく。
食欲がない為か、半分も食べられなかった事に申し訳なさそうな顔をする桜姫とそんな彼女に、家康は気にするなと言いながらこめかみに優しく口づけを落とした。
昼餉を終わらせて、再び眠りに就いた桜姫を見て、精神を落ち着かせるべく鍛錬を始めることにした家康であったが、弓を射る手が落ち着かない。彼女のぬくもりを思い出しては中心から大きく外れた的に盛大なため息をついた。
弓を止め、素振りを繰り返した後、庭にいるワサビと時間を過ごす。
「家康?」
縁側まで歩いてきた桜姫は、まだふらつく足取りでいた。慌てて桜姫の傍に駆け寄った家康は彼女の身体を支えて部屋に戻す。
「大人しくしてないとって言ったでしょ」
「だって……」
そんな寂しそうな顔をするのは熱のせいだろうか?
確かに病に落ちると人は心細くなり、一人でいることを怖がる。
「傍にいるから、休んで」
その日の夜は、一晩中熱にうなされていた桜姫であったが、家康の献身的な看病により、翌日にはだいぶ顔色も良くなっていた。熱も下がってきた様子で、夕方には笑顔も見られるようになった。
「家康、ありがとう。ずいぶん楽になったよ」
「熱が出てる方が、ちゃんと薬飲んでくれるから楽なんだけど」