第2章 【伊達政宗】音の在処②【R18】
こうなる前には、何度も唇を合わせ、何度も身体を重ね恋人同士の夜も過ごしていたが、さすがに病人に手を出すのも憚られ、桜姫の事を思えば思うほどそういった事ができなくなっていた。
かといって他の女に手を出すほど落ちぶれてもいない。
桜姫の事を心から愛しているからこそそうなったのは必然的で快楽主義者である政宗をそれほどまでに変えてしまう彼女には他の武将たちも驚かされていた。
褥を共にしてしまえば手を出さない自信がなかった政宗は、桜姫を彼女の部屋で寝かしつけて自分は自室で眠るという夜を過ごしていた。
それが一番安全だからと思ってとった行動であるが、まさか桜姫の方からこちらへ来るとは思ってもいなかった。書状の中身が半分も頭に入ってこない気がして政宗は一度筆を下ろし桜姫の方へと顔を上げる。
眠いのだろう舟をこぎ始めている桜姫を褥へと運んだ。
「先に寝ていろ」
薄っすらと目を開けた桜姫に囁いて、その耳朶に唇を落とす。立ち上がろうとすると桜姫の手が政宗の手に触れた。
思わず振り返った政宗を見つめ上げてくる。政宗は桜姫の瞳に吸い込まれてしまい、チッと舌打ちをして彼女の脇へ腰を下ろす。胡坐をかいた膝にすり寄ってきた桜姫はニコリとほほ笑み礼を言う代わりに頭をコクリと降ろした。
「傍にいてやるから、早く寝ろ」
ややぶっきらぼうにそう言う政宗を見てクスクスを肩を震わせる桜姫。まるで悪戯をするかのように政宗の腰に手を回した。
「お前なぁ、俺がどんなに堪えて……」
再び小言を言おうとした政宗の唇が、身体を伸ばしてきた桜姫の唇に塞がれる。
久しぶりに味わう桜姫の唇はこんなにも甘かっただろうか?
息を呑んだ政宗は、ゆっくりと息を吐く。先ほどまで笑っていた桜姫の表情も打って変わって何かを求める様な色をしていた。