第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
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「…………ぁ、」
目が覚めた。
「…なんだ、夢かぁ」
自分なのに自分じゃない女性と織田信長との夢…
それにしても、なんて甘くて幸せな夢だったんだろう…
「あーっ、続きが見たいっ!」
あの甘い気分をもう一度味わいたくて、夢の再生を試みようと私は目を瞑った。
「……目覚めたか」
けれどその時、私が眠りに入るのを低い声が邪魔した。
「……っ」
(そう言えば私、タイムスリップしたんだ!)
甘い夢に呑気に浸っている場合ではない状況を思い出し、声のする方に慌てて顔を向けた。
「……っ、あの…」
「貴様、何者だ?」
タイムスリップした時に会って、今のいま、夢の中で会って熱いキスを交わした相手が、私の横であぐらをかいてジッと見つめていた。
「私は、來良と言います」
「來良?…聞かん名前だな……。何故あの場にいた?」
矢継ぎ早に質問をする目の前の男は、夢の中ではあんなにも優しい目をしていた人と同一人物とは思えないほどに、冷ややかな深紅の瞳で私を見下ろす。
そしてその真紅の瞳を見て、あの時、人が目の前で斬られた事を思い出した。
「…そう言えば、あの、男の人は?」
カタカタと体が恐怖で震え出す。
人が斬られるとあんなにも血が吹き出すなんて初めて知った。
「あの男?」
もう存在すらも忘れてしまったのか?信長は私の問いに訝しげな顔をした。
「あ、あなたが斬った男の人です。あの人は…」
聞かない方が良いと分かっているのに、頭のどこかで真実を知りたがる自分がいた。
「…ああ、奴なら死んだ。一撃でそうなる様斬ったのだから、当たり前だ」
「一撃で、って…」
そんな、まるで蚊を殺すみたいな言い方…
(残忍だと言う人物像はその通りなんだ?)
吐き気が込み上げ布団の中で震える私の頭の横に手を突き、男はさらに間合いを詰めた。
「それよりも俺の問いに答えよ、貴様はなぜあそこにおった?」
「…………っ」
真横にある手は、間違いなく人を殺した手なのに……、あんな夢を見たからか、押し倒されている様な格好に、心臓がドキドキと場違いな鼓動を刻み出した。