第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
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「………様、信長様っ、こちらです。早く来て下さい」
「何だ急に、そんなに急かすな」
先程の侍(信長様って呼んでるから、やっぱり織田信長だったんだ)の腕を楽しそうに引っ張りながら、声の女性は急ぐように歩く。
(ここは…どこかの中庭?)
「あそこです。あそこの木を見て下さい」
(あれ?…これ、私…が、喋ってる?)
私(?)は、木々の生い茂る前で歩みを止め、奥の木を指さした。
「あの木がどうかしたのか?」
「もう、ちゃんと見て下さい。ビワの実がなってるでしょう?」
「ああ、そうだな。それがどうした?」
「え、あの…食べたいなぁ〜って思って…」
「?……もしや貴様、あれを俺に取って欲しくて呼んだわけではあるまいな?」
「……えっ、あの…そうだって言ったら…怒りますか?」
「くくっ、いや、だがこの俺をビワ取りのために呼びつけるのは貴様位だ」
呆れた様に笑いながら、信長はブチッと二房ついたビワをもいで私に渡した。
「わぁっ!ありがとうございます。私の背では届かなくて。ふふっ、嬉しい」
「着物や櫛ではなくこんな実一つで喜ぶとは、貴様はいつも安上がりだな」
信長は呆れた顔で笑うと、ふわりと私を抱きしめた。
「信長様と二人で食べたかったんです。ここ最近の信長様はお忙しくて、中々二人きりになれなかったから……、わがままを言ってごめんなさい」
「この口は、いつも愛らしいことを言う」
覗き込まれると、チュッと軽く唇を奪われた。
「……っ、」
「今宵は早く戻る、待っていろ」
「………はい」
「ふっ、それまではこれで我慢だな」
「え、…んっ」
今度は、唇を押し当てられ長いキスをされる。
「んっ、」
優しく何度か啄むと、今度は舌が私の口内を開けて割り込んできた。
「っ、………んっ」
甘くて胸がきゅんとしめつけられる。
「空良、愛してる」