第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「空良って、あなたの恋人ですか?」
「は?」
「あっ、やっ、違いますっ、あの…」
(バカっ!何いきなりインタビューしてんの私!?)
恐怖や戸惑いや、歴史的有名人と話をしている感動など、様々な感情が渦巻いて、場違いな質問が口から飛び出した。
「……貴様、空良の縁者か何かか?」
氷の様な瞳が僅かに揺れた。
「いいえ、違います。彼女の事は知りませんし、会った事もありません」
「では何者だ?空良のフリをして俺に近づき命を狙えとでも言われて来た、どこかの手の者か?」
瞳は一瞬で零度へと戻り、冷めた口調で私を問い詰める。
(私はもしかして、空良と言う女性に似ている?)
そんな疑問が頭の中に浮かんだけれど、次の瞬間それを払拭するほどの息苦しさに襲われた。
「………っぐぅ……っ!」
「俺を、騙せるとでも思ったか?他の誰でもない、空良のフリをしようなど愚かな、その罪、死をもって償うが良い」
怒りを含んだ声が私に死のジャッジを下し、ぐっと首を押さえつけた。
「ぐっ、…ぅっ、ま、待って!話を聞いてっ!……っ、私は…あなたの事が知りたくて、500年先の未来から来たのっ!怪しい者じゃないっ!」
「……は?」
「あなたが恋人に、空良に出した文を読んだの。逢瀬に行こうと、紅はささなくていいって書いた文を」
「……」
首を掴む手の力が僅かに緩んだ。
「っ、ゴホッ、信じられない話だとは思うけど信じて下さいっ!私は、あなたと空良の事が知りたくて、500年先の未来からタイムスリップをして来たんです。だからほらっ、この格好も変わってるで……って、あれっ?何で着物着てるの…っ!」
(うそっ!未来から来た事を伝える数少ない証拠であるお洋服を着てないっ!)
「貴様が着ておった奇妙な着物はそこにある」
信長が指を差した方を見ると、無造作に投げ捨てられた私のお洋服達が…
(あれ?……って言うかこの着物…)
「着物を着せたのは俺だ。貴様を一通り調べねばならなかったからな」
「——————っ!!!!!」
「ふっ、面白い程に赤くなったな」
信長はそう言って笑うと、私の首にかけた手を外した。